LDLコレステロールや動脈硬化について…様々なデータより

 

 

 

<LDLコレステロールの影響には性差がある>
脂質異常症の診断基準には日本動脈硬化学会の2012年版のガイドラインでは高LDLコレステロール血症140(mg/dL)以上、低HDLコレステロール血症40(mg/dL)未満、高中性脂肪血症150(mg/dL)以上とこれまでの基準値と同様です。
これは日本データ80という易学研究から得られたチャートですが、冠動脈疾患とコレステロールとの関係を示しています。男性ではコレステロールが冠動脈疾患のリスクとなっていますが、女性は総コレステロールが高くなっても冠動脈疾患は増えないという結果が得られています。
つまり、男女ではコレステロールと冠動脈疾患死の関係に差があるという事が分かりました。

 

ガイドラインに今回薬物療法の基準が掲載されていますが、まず生活習慣の改善について期間設定が2007年版では3から6ヶ月でしたが、今回削除されています。つまりLDLが高くても食事療法等の改善でしばらく経過を見る事が出来るという事になっています。
次に一時予防においてLDLコレステロールが180以上持続する場合薬物療法を考えるということで、今回はじめてコレステロールが高い事に対する薬物療法の開始基準が開示されて設定されています。

 

このことにより今回の改訂で生活習慣の改善期間を設定しなかったことと、一時予防で薬物療法の開始基準値をLDLコレステロール180(mg/dL)以上と明記したことで、これまで140から179(mg/dL)の薬物療法の対象だった女性について、どうすればよいのかということになってきます。

 

<LDLコレステロールは何を運んでいる?>
脂質についての分類を示したもの(図)となっています。まず、脂質というものは脂肪酸とコレステロールに大きく分けられます。そしてそのほとんどは脂肪酸です。コレステロールの他に脂肪酸はコレステロールエステル、リン脂質、中性脂肪のなかに脂肪酸が入っているわけです。

 

食品の脂質については、まず魚などの脂質は20%ぐらい含まれているわけですが、肉についても同様です。それに対して脂肪酸というのは脂質の8割を示しています。コレステロールは脂肪酸がg単位であるのに対してmg単位ということで脂質における脂肪酸の割合はコレステロールに比べてはるかに大きいということが分かります。

 

脂肪はそのままでは血液中に溶けませんので、リポ蛋白という形で血液中を運ばれています。コレステロールエステル、リン脂質、中性脂肪こういうところに脂肪酸が組み込まれてコレステロール以外に運ばれている訳です。つまり、脂肪酸とコレステロールをリポ蛋白は運んでいることになります。

 

<LDLコレステロールと脂肪酸の関係>
脂肪酸は飽和脂肪酸にパルミチン酸やステアリン酸があります。一価(不飽和)脂肪酸にはオレイン酸(オリーブ油に含まれている主な成分)です。n-3系多価不飽和脂肪酸にはEPA、DHA(これは魚油に含まれています)。n-6系(多価不飽和)脂肪酸にはリノール酸があり、リノール酸はアラキドン酸に代謝されます。
この多価不飽和脂肪酸(n-3系、n-6系)は生体内では作れないので必須脂肪酸と言われています。

 

私の方で行っています自主研究ですが、55歳以上の非高血圧の女性について調べています。総コレステロールなどの血清脂質とパルミチン酸などの脂肪酸についてその関係を調べています。
そうしますと、LDLコレステロールと有意な正相関があったのは、リノール酸とDHAという結果が得られました。

 

LDLと脂肪酸についてはLDLに含まれる主要な脂肪酸はリノール酸であることが書かれています。また、アラキドン酸やEPA、DHAなどもリン脂質やコレステロール(エステル)の構成脂肪酸であるという風に書かれています。

 

つまり魚を食べますと肝臓でEPAなどが中性脂肪の合成抑制を行い、EPAはそのままリポタンパクのVLDLの成分として運ばれ、そして中性脂肪を外してLDLに変わっていきます。
つまりEPAはリポ蛋白の形でLDLに取り込まれて全身に運ばれるということになります。

 

<動脈硬化度と脂肪酸の関係>
当院の自主研究で動脈硬化度(頚動脈IMT)と年齢、BMI、血清のコレステロール値、脂肪酸値、それと収縮期血圧、拡張期血圧、空腹時血糖などについての関係を調べています。
その結果、動脈硬化度と有意な正相関があったのはリノール酸でした。
JERIS研究でも冠動脈イベントを増加させたのはリノール酸ということが分かりました。

 

福岡県の疫学研究によると魚類を食べるとEPA、DHAが血液中に高くなります。これらの摂取によって動脈硬化度は抑制される、ということが分かっています。

 

(高LDLコレステロール血症・60歳女性)
LDLコレステロール212、DHA、EPAは高い値となっています。リノール酸も高くなっています。この女性に頚動脈エコーを行ったところ、同年齢の女性と変わらない動脈硬化度、つまり動脈硬化が進んでいないということが分かります。

 

(人種(日本人と白人)を比較・男性)
日本人は白人の約3倍、EPAとDHAが高いです。一方でリノール酸、アラキドン酸は白人の方が高いというデータを得ています。

 

まとめ…
魚を食べるとn-3系(EPA、DHA)がLDLコレステロールのリン脂質やコレステロールエステルに組み込まれ、日本人ではLDLコレステロールの値が高くても動脈硬化が進まない症例は多いということと、脂肪酸を測定しない場合、LDLの値よりも動脈硬化度で方針を決めたほうが良いのではないか、という風に考えています。